結論
筆者が別に運営している日本語サイトでは、一部の記事の英語版を別のURLで公開していました。Search Consoleの生成AIレポート(AIによる概要・AIモードでの表示)を3か月分見ると、表示の約96%が英語版のURLでした。日本語版で表示があったのは記事2本と、記事以外の2ページだけです。
通常の検索結果では逆で、日本語版の記事は英語版の約3.1倍表示され、クリックは約8.4倍ありました。同じ記事の日本語と英語で、通常検索とAI検索の強さがひっくり返っています。
引用が付いた英語版の多くは、海外の投資会社が日本の上場企業の株を買った・売ったという話題でした。日本語では同じ話題を扱うサイトがたくさんある一方、英語で書いたページはほとんど見当たりません。AIに引用されるための近道は、競合がまだ書いていない言語×話題で書くことだ、というのが今回の観測から出てくる仮説です。
Figure
同じ記事の日本語版と英語版
約96%
生成AIレポートの表示のうち英語版
日本語版の記事は2本だけ
約3.1倍
通常検索の表示(日本語÷英語)
クリックは約8.4倍
6.4位
英語版の平均掲載順位
日本語版は9.4位
何を測ったか
- 対象: 筆者が別に運営している日本語サイト1件。日本の上場企業の開示資料をもとに記事を書いている
- 英語版: 記事の英訳を、日本語版とは別のURLで公開していた。日本語版と英語版はそれぞれ自分自身を正規URLとし、hreflangで互いを言語違いの同じページとして宣言していた
- データ: Search Consoleの生成AIレポート(上位のページ一覧)と、通常の検索パフォーマンス(APIでページ別に取得)
- インデックスの状態: 引用上位7本について、日本語版と英語版のURLをSearch ConsoleのURL検査で確認した
Googleのドキュメントによると、生成AIレポートが数えるのはGoogle検索のAIによる概要とAIモードに、サイトへのリンクが表示された回数です。Geminiアプリは含まれません。また、AIによる概要やAIモードで補足リンクとして表示される条件は、インデックスされていて、スニペット付きで検索結果に出られることだけで、追加の技術的な条件は無いとされています。
URL検査では、引用上位7本の日本語版・英語版がどちらもインデックスに入っていました。つまり条件は同じで、どちらも引用される資格があったのに、AIが選んだのはほぼ英語版だったことになります。
引用が付いた記事の特徴
Figure
引用が付いた記事と付かなかった記事
英語版(引用が集中)
表示の約96%
- 海外の投資会社が日本企業の株を売買した話題
- 英語で同じ話題を書いたページがほぼ無い
- 通常検索でも平均6.4位と上位
- 固有名は英語の標準表記
日本語版(ほぼ引用されず)
記事は2本だけ
- 同じ話題を扱う日本語サイトが多い
- 通常検索の表示とクリックは英語版より多い
- 平均掲載順位は9.4位
- 海外の社名を開示資料どおり全角英字で表記
英語版に引用が集まった理由として、次の2つが考えられます。
- 英語には競合がいない。「海外の投資会社Aが日本企業Bの株を何%取得した」という事実を英語で書いたページは、ほとんど存在しません。通常検索でも、英語版は後から出したのに平均掲載順位が日本語版より3つ上でした。候補が少なければ、AIが引用先として選ぶページもそれだけ絞られます
- 固有名の表記が相手の言語で標準になっている。英語版では海外の投資会社の名前を普通の英語表記で書いていました。日本語版は開示資料の表記をそのまま使っていたので、全角の英字になっていて、タイトルでは長い社名を途中で省略していました
2つ目も効いている可能性はあります。日本語版で引用が付いた2本は、どちらも投資会社の名前が日本語(カタカナや漢字)でした。ただ、今回のデータでは1つ目と2つ目を切り分けられません。
GoogleはAIによる概要とAIモードについて、**関連する検索を小さな話題に分けて複数回投げる「クエリファンアウト」**を使うことがあると説明しています。英語版が表示された検索語には、海外の投資会社の英語名そのものに加えて、「(会社名)は?」「買収した?」のような短い日本語の質問も混じっていました。日本語の質問から英語の下位検索が作られ、そこで競合のいない英語版が拾われた、という流れがありえます(Search ConsoleのAPIでは通常検索とAI機能の検索語を分けられないので、推測です)。クエリファンアウトの仕組みはクエリファンアウトの解説記事にまとめています。
引用は増えたが、流入は増えていない
ここは分けて考える必要があります。生成AIレポートが数えているのは表示回数だけで、AIの回答からどれだけクリックされたかは出ません。通常検索のクリックでは日本語版が英語版の約8.4倍で、英語版を読む人は少ないままでした。
英語版の価値は「AIの回答で、この話題の出典として名前が出ること」で、ページビューを直接増やすことではありません。広告収入のようにページビューで稼ぐサイトなら、英訳のコストに見合うかは別に計算する必要があります。AI検索の流入の測り方はSearch ConsoleでAIモードの流入を見る記事を参照してください。
この観測から言えること/言えないこと
言えること:
- 同じ記事の日本語版と英語版がどちらもインデックスされている状態で、生成AIレポートの表示の約96%は英語版だった
- 通常検索では日本語版のほうが表示もクリックも多く、AI検索とは逆だった
- 引用が付いた英語版は、英語で書かれたページがほとんど無い話題に集中していた
言えないこと:
- 「競合がいないから引用された」と「固有名の表記が標準だったから引用された」は、このデータでは切り分けられません
- 表示は3か月でも小さな数で、標本は1サイトです。別の話題や別の言語で同じことが起きるとは限りません
- AIの回答からのクリックは測れていません。引用が流入にどれだけつながったかは分かりません
- Geminiアプリなど、生成AIレポートの対象外の場所で引用されたかどうかは、このデータには入っていません
やること/やらなくていいこと
Figure
別の言語で書いてAIに引用を取りに行くとき
やること
- 自サイトにしか無い一次情報のうち、別の言語に競合がいない話題だけを翻訳する
- 人名・社名は相手の言語で標準の表記にそろえる(全角英字や途中省略を避ける)
- 言語ごとに別のURLにして、hreflangで対応関係を宣言する
- 生成AIレポートを言語別のURLで分けて、引用とクリックを別々に記録する
やらなくていいこと
- 全記事を機械的に翻訳する(競合の多い話題は、どの言語でも埋もれる)
- 同じURLのまま、ブラウザの言語設定で表示言語を切り替える
- 引用が増えたことを、ページビューが増える根拠として扱う
- 通常検索の順位が低いから、AI検索でも引用されないと決めつける
手順
- 自サイトの記事から、自分で集めた一次情報が中心の記事を抜き出す(ニュースの要約や、他のサイトにもある解説は外す)
- 抜き出した記事の主題を、翻訳先の言語で検索する。固有名の組み合わせ(例: 投資会社名+企業名)で、同じ事実を書いたページがあるかを見る
- 該当ページがほとんど無い記事だけを翻訳する。固有名は翻訳先の言語での正式な表記にそろえ、1文目で「誰が・何を・どうした」を答える
- 翻訳版は別のURLで公開し、元の記事とhreflangで結ぶ
- 1〜2か月後に、生成AIレポートの上位のページを言語別に数え、通常検索のクリックと並べて判断する
2番がこの方法の中心です。競合がいるかどうかを確かめずに翻訳すると、翻訳のコストだけがかかって、どちらの言語でも埋もれます。
よくある質問
Geminiに引用されたと考えていいのですか
生成AIレポートが数えているのは、Google検索のAIによる概要とAIモードでの表示です。どちらもGoogle検索の機能で、Geminiアプリでの引用はこのレポートに含まれないとGoogleは説明しています。Geminiアプリで同じように引用されるかは、実際に質問して確かめる必要があります。
英語版を作れば、どんな記事でもAIに引用されますか
今回引用が集まったのは、英語で書かれたページがほとんど無い話題でした。英語圏にすでに解説記事がたくさんある話題を翻訳しても、英語の競合と比べられるだけです。翻訳する前に、その言語に競合がいないかを確かめるのが先です。
英語版はサブドメインとサブディレクトリのどちらで出すべきですか
Googleは別の言語版を別のURLで出すことをすすめていて、サブドメインとサブディレクトリのどちらも選択肢に挙げています。今回引用が付いた英語版は、既存サイトと同じホストの下(サブディレクトリ)で公開していたものです。URL構造の違いが引用に影響したかどうかは、このデータからは分かりません。
日本語版の固有名はどう書けばいいですか
今回の日本語版は、海外の社名を開示資料どおり全角の英字で書き、タイトルでは長い社名を途中で省略していました。検索する人やAIが使う表記は、たいてい半角の英語表記です。元の資料の表記を残したい場合でも、本文の1文目には一般的な表記のフルネームを入れておくのが無難です。
Sources · 一次情報
この記事は一次情報をもとに作成し、公開前に自動検査を通しています。作成の手順と訂正の方針は運営者情報に記載しています。
Share
XでポストはてなブックマークLINEで送る