結論
筆者が運営している日本語サイトのアクセスログを29日分(2026年8月3日〜8月31日)集計したところ、AI検索・AI学習系クローラー8種からの1万9,347件のリクエストのうち、/llms.txt を取得したものは0件でした。
このサイトは /llms.txt を実際に配信しています。「置いていないから取りに来なかった」のではありません。置いてあるファイルに、29日間、どのAIクローラーも一度も触れませんでした。
同じ期間に /llms.txt は7回取得されていますが、7回とも通常のブラウザのユーザーエージェント(Chrome / Firefox)です。人間かブラウザ拡張が見に来た記録であって、AI事業者のクローラーではありません。
一方で、同じルート直下にある /robots.txt は OAI-SearchBot が132回、ClaudeBot が76回、Applebot が59回、PerplexityBot が24回取得しています。ルート直下の設定ファイルを取りに来る挙動そのものは存在するのに、llms.txt だけが素通りされている、という観測です。
Figure
29日間・1サイトの実測
19,347
AI系クローラーの総リクエスト
8種の合計
0
llms.txtの取得
AI系クローラーによるもの
7
llms.txtの取得
すべて通常ブラウザのUA
292
robots.txtの取得
AI系クローラーによるもの
何を測ったか
対象は筆者が別に運営している日本語サイト1件です。アプリケーション側でリクエストのユーザーエージェント・パス・IPアドレスを記録しており、そのテーブルを集計しました。
- 期間: 2026年8月3日00:00〜8月31日23:59(日本時間、29日間)
- 対象: ユーザーエージェントから識別できたクローラーのうち、AI検索・AI学習用途のもの8種
- 数え方: パスが
/llms.txtに完全一致するリクエストを数える
CDNやWAFを経由せずアプリケーションに届いたリクエストを記録しているため、ブロックされて到達しなかったアクセスは含みません。ただしこのサイトはAIクローラーをブロックしていないので、「拒否したから来なかった」ではありません。
クローラー別の内訳
Figure
AI系クローラーのリクエスト数(29日間)
OAI-SearchBot
8391件
robots.txt 132回
PerplexityBot
2576件
robots.txt 24回
ClaudeBot
2302件
robots.txt 76回
meta-externalagent
2030件
robots.txt 0回
GPTBot
1614件
robots.txt 0回
ChatGPT-User
1599件
robots.txt 1回
Amazonbot
551件
robots.txt 0回
Applebot
284件
robots.txt 59回
ここで目立つのは、GPTBot・meta-externalagent・Amazonbot が期間中 robots.txt すら取得していない点です。robots.txt は取得結果がキャッシュされるため、29日間まったく取りに来ないこと自体は「無視している」証拠にはなりません。ただ、robots.txt を取りに来たクローラー(OAI-SearchBot・ClaudeBot・PerplexityBot・Applebot)でさえ、llms.txt は一度も取りに来なかったという対比は残ります。
公式ドキュメントは何と言っているか
この観測結果は、AI事業者・検索エンジン側の説明と矛盾しません。
Googleは、AI OverviewsやAI Modeに表示されるために機械可読ファイルやAI用のテキストファイル、マークアップを新しく作る必要はないと明記しています。追加の要件や特別な最適化は不要、という書き方です。llms.txt を名指しはしていませんが、「AI向けの新しいファイルを作れ」という主張は公式には存在しません。
OpenAIがクローラーについて公開しているドキュメントも、書かれているのはユーザーエージェント名と robots.txt での許可・拒否の方法だけです。llms.txt を読む、参照する、推奨する、といった記述はありません。
GoogleのJohn Muellerは、llms.txt について「誰にも分からない、現時点では完全に推測の域」という趣旨の発言をしています。ファイル自体は以前から存在するのに、どのAIシステムもそれを使っていない、という指摘です。
普及率のほうは伸びています。Rankabilityの計測では、上位1,000サイトのうち8.7%が llms.txt を設置しています(2026年8月23日更新時点)。ただし同社も、自社のクローラーがファイルの有無を確認しているだけで、実際のAIアシスタントが取得しているかは測っていない、と限界を明示しています。設置率は測られているが、消費されているかは誰も測っていなかった——今回の集計はその空白を、1サイト分だけ埋めるものです。
この観測から言えること
言えることは1つだけです。このサイトでは、この29日間、AI系クローラーが llms.txt を取得しなかった。 存在するファイルが素通りされた、という事実の記録です。標本は1サイト、期間は29日です。
つまり「置くと損をする」ではなく、「置いたことをAIクローラーの取得で確認できた事実はゼロだった」という話です。
手順
同じことは自分のサイトでも確認できます。アクセスログさえあれば10分です。
Figure
自分のサイトで確認する手順
- 1
1. 期間を固定する
月初〜月末など、日付の端が切れない範囲を決める。ログは増え続けるので範囲を決めないと数字が動く
- 2
2. llms.txtを数える
パスが /llms.txt のリクエストを、ユーザーエージェント別に集計する
- 3
3. robots.txtも数える
同じ期間・同じ集計で比較する。こちらが0なら、ログ側の取りこぼしを疑う
- 4
4. UAではなくIPで裏を取る
件数が多いときは、事業者が公開しているIP範囲と照合して偽装を除く
3番目が要点です。llms.txt が0件でも、robots.txt が取得されていれば「ログは正しく記録できている」と言えます。両方0なら、それは計測の失敗です。
やること/やらなくていいこと
Figure
llms.txtへの向き合い方
やること
- robots.txtでAIクローラーの許可・拒否を明示する(これは実際に取得されている)
- 置くなら人間向けの索引として置く。設置コストは低く、害もない
- 自分のログで、自サイトのllms.txtが取得されているかを月1回数える
- AI向けの施策を評価するときは、ログでクローラーの実挙動を先に見る
やらなくていいこと
- llms.txtの設置をAI検索対策の中心に据える
- 「llms.txtを置けばAIに引用される」と説明する(一次情報に根拠がない)
- llms.txtの整備に時間をかけて、robots.txtの設定を後回しにする
- 設置率の統計を、消費されている証拠として引用する
よくある質問
llms.txtは置かないほうがいいのですか
置いて損をする理由は見つかっていません。今回のログにも、設置による悪影響は現れていません。問題は費用対効果です。29日間どのAIクローラーも取得しなかったファイルの整備に工数を割くより、robots.txtでAIクローラーの許可・拒否を明示するほうが、実際に取得されている分だけ確実です。
AIクローラーが取得していないのに、AIが自分のサイトを引用することはありますか
あります。今回のログでも、OAI-SearchBotは29日間で8,391件、ページ本体を取得しています。AIが参照しているのはこちらの経路です。llms.txtが読まれていないことと、サイトがAIに読まれていないことは別の話です。
robots.txtを取得していないクローラーは、robots.txtを無視しているということですか
このログだけでは判断できません。robots.txtの取得結果は一定期間キャッシュされるのが一般的で、29日間取りに来ないこともあり得ます。無視の有無を確かめるには、拒否したパスへのアクセスが続くかどうかを見る必要があり、それは今回の集計範囲外です。
標本1サイトの結果をどこまで信じてよいですか
「このサイトではこうだった」という存在証明としてだけ使ってください。比率や一般論には使えません。ただし手順は3ステップなので、自分のログで同じ数字を出すほうが早いはずです。自分のサイトの数字が、他人の統計より優先されます。
Sources · 一次情報
この記事は一次情報をもとに作成し、公開前に自動検査を通しています。作成の手順と訂正の方針は運営者情報に記載しています。
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