GEO解説

fan-outクエリの中でブランドはどう並ぶのか。公開されている調査5本を読み合わせた

AIが検索前に組み立てるfan-outクエリに、どのブランド名がどう入るのか。ChatGPTの通信を読んだ調査、同じ質問を30回投げた実験、指名検索1,797本の分析、32万件の集計を1本にまとめ、順位の決まり方について、いま言えることを整理します。

結論

fan-outクエリの中のブランドは、ChatGPTが検索する前に学習済みの知識から並べた「候補リスト」です。Suganthan Mohanadasan氏がChatGPTの通信を直接読んだ調査では、27件中21件で、ユーザーが書いていないブランド名が最初の検索文字列に入っていました。そのリストに名前があるブランドは68.9%が最終回答に載り、検索で拾われただけのブランドは2.1%でした。

ただし「リストの中で何番目に書かれるか」を決める仕組みは、どの調査でも公開されていません。分かっているのはリストに入るかどうかが勝負で、入り方はカテゴリ検索と指名検索でまったく違うということです。この記事では公開されている調査5本を読み合わせ、いま言えることを整理します。

前提:fan-outクエリとは

fan-outクエリとは、AIがユーザーの質問をそのまま検索せず、自分で複数の検索語に組み立て直して投げるものです。Googleは、AIモードとAIによる概要がこの手法(クエリ ファンアウト)を使うことを公式ガイドで説明しています。ChatGPTでも同じ動きが会話JSONから確認でき、当サイトは実ログで3本のfan-outクエリと候補36URLを追った記事を公開しています。

ここで扱うのは、そのfan-outクエリの中身にブランド名がどう入るかです。回答工程の全体はChatGPTが答えを作る流れをつないだ記事を先に読むと位置づけが分かります。

調査1:ChatGPTは検索する前にブランドを並べている

いちばん直接的な証拠は、Suganthan Mohanadasan氏が2026年8月10日に公開した調査です。ログイン済みのChatGPT Plusアカウントで2026年7月24〜25日に60会話を実行し、画面の出力ではなく生のHTTP通信を読んでいます。

「In 21 of 27 conversations, that first query contained brands the user never typed.」
— Suganthan Mohanadasan「ChatGPT Already Knows Who's In The Running Before It Searches」2026年8月10日

27会話のうち21件で、最初の検索クエリに「ユーザーが一度も打っていないブランド名」が入っていた、という意味です。この時点では1ページも取得していないので、検索結果から学んだ名前ではありません。学習済みの知識から先にリストを作っているということです。

例として挙げられている検索文字列は次のとおりです。

質問のカテゴリ最初の検索クエリに並んだブランド
メモ取りアプリGranola、Notion AI、Otter、Fireflies、Fathom、Mem、Limitless
会計ソフトXero、QuickBooks、Zoho Books、FreshBooks、Wave、Sage
ロボット掃除機Roborock Saros、Dreame X50、Narwal Freo Z10、Eufy S1 Pro
WebホスティングHostinger、SiteGround、Cloudways、Kinsta

そして、このリストに入ったかどうかで、回答に載る確率が桁違いに変わります。

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最初の検索クエリに名前があったブランドと、無かったブランドの差(Suganthan調査・57会話)

68.9%

検索クエリに名前があったブランドが回答に載った割合

2.1%

検索で拾われただけのブランドが回答に載った割合

約33倍の差

3.1%

取得されたページのうち引用されたページ

3,554件中110件

2026年7月24〜25日、ChatGPT Plusの通信を直接取得。取得したページ3,554件のうち引用は110件。

調査元は「1アカウントのデータで、個人化の影響を受ける」「数字は測定値ではなく方向を示すもの」「サンプルはソフトウェアとAIツールに偏っている」と注意書きをつけています。それでも、ChatGPTは検索する前に候補を決めているという方向は、Lily Ray氏がこの調査を引いて解説した記事でも同じ読み方をされています。そこで説明されている型は、まず候補を並べた1本の検索を投げ、次に候補1社ずつの確認検索を投げる、というものです。

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カテゴリ質問に対するChatGPTの検索の型(Suganthan調査・Lily Ray解説)

  1. 1

    質問を受ける

    例:おすすめのメモ取りアプリは

  2. 2

    候補を並べた1本目の検索

    学習済みの知識から複数のブランド名を1つの検索語に入れる

  3. 3

    候補1社ずつの確認検索

    並べた名前ごとに評価や比較を検索する

  4. 4

    回答

    1本目に名前があったブランドの68.9%が載る

候補リストは1本目の検索文字列で決まる。2本目以降はリストの確認作業。

調査2:同じ質問を30回投げると、常連が見える

1回の実行では偶然か常連か区別がつきません。Seer InteractiveのWil Reynolds氏は2026年6月25日、同じ質問をChatGPT 5.5で30回実行し、fan-outクエリに出る名前の一貫性を追いました。質問は「成長担当の副社長として、AI検索の議論を先導しているのはどの代理店か」という内容です。

結果は、Lily Ray氏、Mike King氏、Wil Reynolds氏の3つの名前が回答の半数に登場しました。調査元は「1回のプロンプトはノイズで、信号は実行を積み重ねて初めて見える」とも書いています。

この実験が示すのは、順位表そのものではありません。示しているのは、fan-outクエリに固有名詞として入る名前は、繰り返しても入れ替わりにくいということです。そして、fan-outクエリが「Lily Ray GEO strategy」のように人名や社名を含んだ時点で、その検索に答えられるのはほぼ本人のコンテンツだけになります。名前がfan-outに入ることは、その検索を丸ごと取ることと同じです。

調査3:指名検索では競合が並ばない

ここまでは「おすすめは」というカテゴリ質問の話でした。自社名を含む質問では、動きが逆になります。

SEOコンサルタントのMJ Cachón氏は2026年8月25日、医療・スポーツ小売・ホテルの3業種で、ブランド名を含む189本の質問をGPT-5.5に繰り返し投げました。723回の実行で1,797本のサブクエリが集まっています。

Figure

ブランド名を含む質問から生まれたサブクエリの内訳(MJ Cachón・1,797本)

当該ブランド名を含むサブクエリ

93.4%

site: 演算子で特定ドメインに絞ったサブクエリ

30.2%

競合のブランド名を含むサブクエリ

0.8%

ほぼゼロ

2026年8月、GPT-5.5、3業種189本の質問を繰り返し実行。指名検索ではAIは当該ブランドの中に潜っていく。

サブクエリの93.4%が当該ブランド名を含み、競合名を含むのは0.8%だけでした。1本の質問あたり平均10.3本のサブクエリが生まれ、検索は「自然文の質問→site:でドメインを絞る→引用符で完全一致の確認→短い言い換え」の4段階で深まっていきます。ただし63.9%は2回以内の検索で終わっています。

つまり指名検索では、fan-outクエリの中にブランドが「並ぶ」ことはほぼありません。順位を気にする場面ではなく、自社の情報がそのまま拾われるかを気にする場面です。調査元は「モデルが似た検索を繰り返しているのに自社がその1つに入っていないなら、どれにも入っていない可能性が高い」と書いています。

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カテゴリ検索と指名検索で、fan-outクエリの中のブランドはこう違う

カテゴリ検索(おすすめは・比較して)

ブランドが並ぶ

  • 1本目の検索語に複数のブランド名が並ぶ
  • 並ぶ名前は学習済みの知識から選ばれる
  • 名前があれば68.9%、無ければ2.1%が回答に載る
  • 繰り返しても常連は入れ替わりにくい

指名検索(〇〇の評判は・〇〇の料金は)

ブランドに潜る

  • サブクエリの93.4%が当該ブランド名を含む
  • 競合名が入るのは0.8%だけ
  • site:で自社ドメインに絞った検索が30.2%
  • 順位ではなく、自社の情報が拾われるかが問題
左は調査1・2、右は調査3の結果。同じ「ブランド名」でも、入り方がまったく違う。

調査4:32万件で見ると、ブランドの前後に何がつくか

個々の会話ではなく大量の集計で見た調査もあります。Centiumは2026年の3か月間、130ブランド超について322,485件のfan-out検索をChatGPTとGeminiから集めました。

  • 質問の80%が「best」または「top」を含む検索を少なくとも1本生んでいた
  • 検索語単位では約26%が「best」か「top」を含む
  • 質問の46%が、特定の年を含む検索を少なくとも1本生んでいた
  • ブランド名を含む質問では、約3分の1がそのブランドの苦情や詐欺疑いを探す検索を生んでいた

Peec AIも2026年4月1〜21日に500万件のfan-outを集め、ChatGPTが「サポートが良いCRMは」という質問を「CRM integration sync capabilities - Salesforce, HubSpot, Microsoft Dynamics comparison」のように、ブランド名を足した比較の検索語に書き換える例を示しています。1質問あたりのfan-out数はChatGPTが2.1本、Grokが6.8本でした。

この2本から言えるのは、ブランド名は単独で検索されるのではなく、「best」「年号」「比較」「苦情」と組み合わさって検索されるということです。自社名がリストに入ったあと、確認検索で何が出るかまでが見られています。

当サイトの見解:順位について言えること

5本を読み合わせると、はっきり言えることが5つあります。

  1. カテゴリ質問では、ChatGPTは検索前に学習済みの知識からブランドの候補リストを作る(調査1)
  2. リストに入るかどうかで、回答に載る確率が約33倍違う(調査1)
  3. リストの常連は繰り返しても入れ替わりにくい(調査2)
  4. 指名検索ではリストは作られず、当該ブランドの中に潜る。競合は0.8%しか出ない(調査3)
  5. リストに入ったあとは「best」「年号」「苦情」を伴う確認検索が続く(調査4)

順位の規則を示した調査は、5本のうち1本もありません。 また5本とも英語圏の調査で、日本語の質問での再現性は確かめられていません。

当サイトの見解は次のとおりです。fan-outクエリの「ブランド順位」を追いかけるより、「リストに入っているか」と「入ったあとの確認検索で何が出るか」の2点を見るほうが、いま取れるデータで判断できます。 順位の規則が公開されるまでは、順番の上下を施策の成果として扱わないでください。

リストに入るための施策は、実測データがある施策を仕分けた記事と教科書のレッスン13で扱っています。学習済みの知識に名前が入るには、自社サイトの外で「カテゴリ名+自社名」が並ぶ露出が要る、というのが両方の結論です。

手順

  1. 自社カテゴリの質問を3〜5本決める。例えば「おすすめの〇〇は」「〇〇を比較して」のようなカテゴリ質問と、「〇〇(自社名)の評判は」のような指名質問を分けて用意する
  2. カテゴリ質問をChatGPTに投げ、fan-outクエリを記録する。会話JSONの取り方は実ログ解析の記事の手順のとおり
  3. 1本目の検索文字列に並んだブランド名を、質問ごとに表に残す。自社名の有無と、並んだ社数を記録する
  4. 同じ質問を最低10回以上繰り返す。調査2は30回で常連を見つけている。自社名が出た回数を割合で残す
  5. 指名質問も投げ、サブクエリに「評判」「苦情」「料金」など何が付くかを記録する。付いた語で自社を検索し、上位に何が出るかを確認する
  6. リストに自社名が無い場合は、比較記事・レビュー記事・業界メディアで「カテゴリ名+自社名」が同じ文に並ぶ露出を増やす。自社サイトの中で「業界No.1」と書いても、リストには入らない
  7. 2〜4週間おきに手順2〜5を繰り返し、割合で比べる。1回ごとの出た・出ないは記録にしない

例えば、会計ソフトを扱う日本のSaaSなら、「個人事業主向けの会計ソフトのおすすめは」を10回投げて自社名が3回並んだ、という記録を残します。次の期間に5回になれば方向は上向きです。順番が2番目から4番目に下がったことは、いまの調査では評価できません。

やること/やらなくていいこと

Figure

fan-outクエリのブランドについて、いま取れるデータで判断できること

やること

  • カテゴリ質問の1本目の検索文字列に、自社名が並ぶかを記録する
  • 同じ質問を10回以上繰り返し、自社名が出た割合で比べる
  • 指名検索のサブクエリに付く語(評判・苦情・料金)を先に点検する
  • 第三者のページで「カテゴリ名+自社名」が並ぶ露出を増やす

やらなくていいこと

  • 検索文字列の中で自社が何番目かを、施策の成果として報告すること
  • 1回の実行で自社名が出た・出ないを結論にすること
  • 指名検索の結果を見て「競合より上に出た」と判断すること
  • 英語圏の調査の数字を、日本語の自社カテゴリにそのまま当てはめること
「やらなくていい」は、調査で裏付けが無いので工数を積むな、という意味です。

順番を成果にしないのは、順番を決める規則がどの調査でも示されていないからです。1回で結論を出さないのは、調査2が「1回はノイズ」と明記しているからです。指名検索で競合との上下を見ないのは、指名検索では競合名が0.8%しか出ないからです。

よくある質問

fan-outクエリの中のブランドの順番は、何で決まりますか

順番を決める規則は、公開されている調査のどれにも示されていません。分かっているのは、ChatGPTが検索する前に学習済みの知識からブランドの候補を並べることと、その候補に入ったブランドの68.9%が回答に載ることまでです。順番の上下を施策の成果として扱う根拠は、現時点ではありません。

fan-outクエリに自社名が入っていなければ、もう回答には載りませんか

載る可能性はありますが、Suganthan氏の調査では検索で拾われただけのブランドが回答に載ったのは2.1%でした。候補に名前があった場合の68.9%と比べると約33倍の差です。まずは候補リストに入ることを目標にし、そのために第三者のページでカテゴリ名と自社名が並ぶ露出を増やしてください。

自社名で検索されたときは、競合と比べられているのですか

ほぼ比べられていません。MJ Cachón氏がブランド名を含む189本の質問を繰り返した調査では、1,797本のサブクエリのうち競合名を含むものは0.8%でした。代わりにサブクエリの93.4%が当該ブランド名を含み、約3分の1の指名質問では苦情や詐欺疑いを探す検索が生まれています。指名検索で見るべきは順位ではなく、自社の評判として何が拾われるかです。

この記事の数字は日本語の質問にも当てはまりますか

5本の調査はすべて英語圏のもので、日本語の質問を対象にしたものはありません。ChatGPTが検索前に候補を並べる、指名検索では競合が出ない、という方向は日本語でも変わりにくいと当サイトは考えています。ただし数字そのものは当てはめず、手順のとおり自社カテゴリの質問で記録を取って判断してください。

Sources · 一次情報

この記事は一次情報をもとに作成し、公開前に自動検査を通しています。作成の手順と訂正の方針は運営者情報に記載しています。

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