GEO解説OpenAI公式に学ぶ

ChatGPTのブランド候補は比較サイト経由ではなかった。検索前のクエリに旧ドメインが出た

ChatGPTが「クレジットカードのおすすめ」で挙げた5社は、検索する前に決まっていました。うち1社のドメインは2022年に移転済みで、3回検索して0件のまま候補から消えます。ブランド候補が検索ではなくモデルの内部から出ていることの、いちばん分かりやすい証拠です。

結論

AI検索が挙げるブランドは、その場で比較サイトを読んで選ばれたものではありません。検索を始める前に、モデルが内部に持っている知識から決まっている可能性が高いです。

根拠は、記事75で取ったChatGPTの会話ログにあります。「クレジットカードのおすすめを教えて」と聞いたとき、モデルは1回も検索していない段階で、カード5社の社名と公式ドメインをクエリに書き込んでいました。

fast|三井住友カード NL 年会費 還元率 公式 2026|30|smbc-card.com
fast|楽天カード 年会費 還元率 公式 2026|30|rakuten-card.co.jp
fast|JCB CARD W 年会費 還元率 公式 2026|30|jcb.co.jp
fast|dカード 年会費 還元率 公式 2026|30|d-card.jp
fast|PayPayカード 年会費 還元率 公式 2026|30|paypay-card.co.jp

このうち d-card.jp は、2022年10月に dcard.docomo.ne.jp へ移転済みのドメインです(NTTドコモが告知しています)。モデルは3段階の検索すべてでこの旧ドメインを指定し、結果は0件のまま、dカードは思考の途中で候補から消えました。

いまのウェブを見て候補を作っているなら、いまのドメインが出るはずです。4年前に使われなくなったドメインが出てくる説明は、記憶から書いている以外にありません。

何が起きたか

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候補が決まってから、検索が始まる

  1. 1

    質問を受け取る

    「クレジットカードのおすすめを教えて」。社名は1つも入っていない

  2. 2

    検索する前に、軸を出す

    「年会費」「還元率」「用途別」。この3つが最終回答の表の列にそのまま対応した

  3. 3

    検索する前に、候補5社が決まる

    社名だけでなく公式ドメインまでクエリに書かれる。うち1つは4年前に移転した旧ドメイン

  4. 4

    検索は、決まった候補の裏取り

    5社の公式ドメインに限定した5本から始まる。比較メディアは候補78URLに1件も入らなかった

  5. 5

    回答

    5枚を表で推薦。dカードは検索が0件だったため脱落

2026-09-10のChatGPT(Sol)の会話ログより。記事75の観測を、候補の決まり方の側から並べ直したもの

この順番だと、検索は候補を作る工程ではなく、決まった候補の条件を確かめる工程になります。1段目の5本がすべて公式ドメイン限定だったのは、そのためです。

「記憶から出ている」と言える根拠

会話JSONから言えるのは、候補が検索より前にモデルの内部から出てきた、というところまでです。それが事前学習で身についたものか、事後の学習やシステム側の指示によるものかまでは、ログでは分けられません(記事75のログでは、メモリの枠は空でした)。以下ではいちばん素直な読み方として「学習済みの知識」と書きます。

ログから読める根拠は3つです。

1. ドメインが4年古い

d-card.jp は移転前のドメインです。取得した日(2026-09-10)に確認すると、d-card.jp へのアクセスは dcard.docomo.ne.jp に301で転送され、2段目で指定されていたパス /st/abouts/d-card/ は転送先で404でした。現在のウェブからは取り出せない情報が、クエリに書かれていたことになります。

2. 検索前に回答の骨組みができていた

検索を1回もしていない段階で、モデルは「年会費」「還元率」「用途別」という軸を画面に出しています。この3つが、最終回答の表の列(年会費・基本還元・向いている人)とそのまま一致しました。

3. 同じ質問で候補が入れ替わる

同じ「クレジットカードのおすすめ」でも、記事30(旧モデル・2026-08-31)はJCB・三井住友・エポス・楽天、記事75(Sol・2026-09-10)は三井住友・楽天・JCB・dカード・PayPayでした。エポスが消え、dカードとPayPayが入っています。

辞書を引いているなら毎回同じ結果が返ります。ぶれるのは確率的に思い出しているからですが、この2件はモデルも日付も違うので、入れ替わりの原因まではここからは切り分けられません。

ぶれること自体は、OpenAIが仕様として説明しています。次の単語には複数の候補がありうるため、回答の作り方にランダムな要素が含まれ、同じ質問でも異なる回答になる、と書かれています。

OpenAIの説明と突き合わせる

OpenAIの公式ページは、モデルが学習データをどう保持するかをはっきり書いています。

「モデルは、学習した情報の複製を包含・保存しません。(中略)このモデルは、読み込んだ文章の保存や複製を行いません。」
— OpenAI「ChatGPT及び当社言語モデルの開発方法について」2025年4月30日更新

英語版のヘルプセンターにも、モデルは訓練データのコピーを保存・保持せず、訓練データから「コピー&ペースト」するのではない、という説明があります。学習で変わるのは重み(パラメーター)の数値だけです。

ここから2つのことが出てきます。

  • 出典をたどれません。「この候補はこのページから来た」という対応関係は、モデルの中に残っていません
  • 候補選びは全件比較ではありません。網羅性を保証する仕組みはどこにもありません

偏りの方向も公式に書かれています。モデルは個人情報から名前や住所が文章の中でどう使われるかを学ぶほか、有名人や公人について学習することがある(英語版では「public figures and well-known entities を認識する」)と説明されています。

つまりAI検索の「おすすめ5選」は、公平な比較の結果ではありません。かといって「よく知られている順に並ぶ」とも言えません。公式が書いているのは「よく知られたものを認識することがある」までで、並び順が何で決まるかは示されていないからです。

もう1つ、実務に直結する記述があります。英語版のヘルプセンターは、サイト運営者は robots.txt で GPTBot を拒否することで、公開コンテンツを学習に使わせるかどうかを管理できる、と説明しています。裏を返せば、GPTBotを拒否しているサイトに載っても、その経路では学習に届きません。ただしライセンス提供や他サイトへの転載など、GPTBot以外の経路までは塞げないので、「絶対に学習されない」という意味ではありません。

比較サイトへの掲載はどう効くのか

「AIに載りたいから比較サイトに出稿する」は、効き方が1段ずれています。

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2つの経路は、効くまでの時間が違う

その場で読まれる経路

検索 → 引用

  • AIが実行時に検索して拾う
  • 記事75では1段目が公式ドメイン限定で、比較メディアは候補78URLに1件も入らなかった
  • 記事30では候補36URLのうち14件が比較メディアだったが、引用は0件
  • 掲載した翌日から起こりうる

記憶に入る経路

学習 → 想起

  • 掲載された文章が次の学習に取り込まれて初めて効く
  • 候補リストに入るかどうかを決めているのはこちら
  • 記事61の調査では、候補に名前があったブランドの68.9%が回答に載り、検索で拾われただけは2.1%だった
  • 効くまで数か月〜年単位。今週やって今週効く施策ではない
記事30・61・75の観測からの整理。掲載が無駄という意味ではなく、届く経路が違うという意味

比較サイトに載ること自体は、後者の経路の材料になります。ただし「載った=AIが候補に挙げる」とはいきません。外部ページに載り、その文章が次の学習に取り込まれ、そこでようやく想起されやすくなる、という順番です。

効く形も、名前がどこかに出ていることではなく、カテゴリ名と自社名が同じ文脈に並ぶことです。「会計ソフト freee」のように、カテゴリ語と一緒に書かれた文章が積み上がるほど、そのカテゴリの質問で思い出されやすくなります。

やること/やらなくていいこと

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想起の経路と、裏取りの経路を分けて手当てする

やること

  • ドメインを移転したことがあるなら、旧ドメインで site: 検索されて0件になっていないか確かめる
  • 第三者ページで「カテゴリ名+自社名」が同じ文に並ぶ露出を積む
  • 掲載を狙う媒体の robots.txt を見て、GPTBot を拒否していないか確かめる
  • 公式ページの本文先頭に、比較される条件(年会費・料金・還元率など)を日付付きで書く
  • 自社カテゴリの質問を10回以上投げ、候補に入った回数を割合で記録する

やらなくていいこと

  • 比較サイトへの掲載だけで「AI検索の候補入り」が決まると考える
  • 構造化データやWikidataの登録で候補入りが変わると期待する
  • 旧ドメインの301転送だけで、移転の対応が済んだとみなす
  • 1回の回答に自社が出た・出なかったで判断する
標本は記事75の1件と記事30・61。自社カテゴリで再現するかは自分で測る

構造化データやナレッジグラフへの登録は、候補が挙がった後の「同一視」には効きますが、候補に挙がるかどうかには関与しません。候補はモデルの中で決まっており、そこに外から書き込む手段がないためです。

手順

  1. 自社カテゴリの比較・推薦の質問をChatGPTに投げ、回答が完走してから会話JSONを保存する(手順は記事30と同じ)
  2. messages のうち recipient が web と web.run のメッセージをすべて探し、各段のクエリを読む
  3. どの段にも自社名が出てこなければ、その回は検索すらされていない。1段目だけで判断しない(記事75では、途中で候補に加えたブランドが3段目で検索されている)
  4. 書かれていた場合、| の4項目めのドメイン指定と site: のパスが、現行のものかを確かめる
  5. 同じ質問を10回以上繰り返し、1段目に自社名が入った回数を割合で残す。期間をあけて再測定する

3と5が「思い出されているか」、4が「思い出された情報が古くないか」の点検です。

この記事で言えること

  • 記事75の会話では、検索を1回もしていない段階で候補5社の社名と公式ドメインがクエリに書かれていた
  • そのうち d-card.jp は移転前のドメインで、3段とも0件、候補から脱落した
  • OpenAIは、モデルが学習した情報の複製を保存しないこと、同じ質問でも異なる回答になりうること、有名人や公人(英語版では well-known entities)を学習することがあることを、公式ページで説明している
  • 同じ質問でも、モデルや日付が変わると候補が入れ替わる

候補の観測は、記事75の1件と記事30の1件です。候補の並び順が何で決まるかは、公開されている調査では示されていません。この記事はAIの挙動の記録で、クレジットカードの内容を検証したものではありません。

よくある質問

比較サイトに載る意味は無いということですか

そうではありません。効く経路が違うだけです。比較サイトに載った文章は次の学習に取り込まれる材料になりますし、人が読んで指名検索する経路も別に存在します。成り立たないのは「載ったからAIがすぐ挙げるようになる」という期待だけです。記事30では比較メディア14件が候補に入りながら引用は0件、記事75では候補にすら入りませんでした。

自社が候補に入っているかは、どうやって確かめますか

会話JSONの検索クエリに自社名が書かれているかを見ます。このとき、1段目だけでなく web と web.run のメッセージを全部見てください。2段目以降で足されることがあるので、1段目に無いだけでは「検索されていない」と言えません。画面に出る回答だけでは分かりません。1回では偶然か常連か区別がつかないので、10回以上投げて割合で記録してください。

ドメインを移転したのですが、301を張っていれば大丈夫ですか

足りない可能性があります。記事75では、モデルが旧ドメインで検索を絞り込み、結果が0件のまま候補から脱落しました。転送そのものは効いていますが、site: やドメイン指定の絞り込みは指定された文字列で評価されるため、そこで空振りします。移転済みなら、自社カテゴリの質問を投げて、クエリに旧ドメインが書かれていないか確認してください。

構造化データやWikidataの登録は効きませんか

候補に挙がるかどうかには関与しません。候補はモデルのパラメータの中で決まっており、外から書き込む手段がないためです。効くのは、候補が挙がって検索に入った後の、表記ゆれの同一視や情報の取り違えを防ぐ側です。土台として整えるものであって、候補入りを増やす施策として数えないでください。

AIに「なぜその5枚を選んだのか」と聞けば分かりますか

分かりません。OpenAIは「モデルは、学習した情報の複製を包含・保存しません」と説明しています。学習で変わるのは重みの数値だけで、「この候補はこのページから来た」という対応関係は内部に残っていません。モデルに理由を聞くと説明はしてくれますが、それは事後の説明であって、出典の記録ではありません。裏付けとして使わないでください。

Sources · 一次情報

この記事は一次情報をもとに作成し、公開前に自動検査を通しています。作成の手順と訂正の方針は運営者情報に記載しています。

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